
まずは不具合に関する情報を集めよう。

不具合が発生した原因や対策を考える際、とにかく不具合が何処でどんな風に起こったか、誰が何時作ったかなど、不具合に関する情報を集めましょう。この情報集めが不具合の原因を発見したり対策を考える為に特に重要になります!この部分については「不具合報告書を書いてみよう。注意ポイントやコツの紹介です。」記事にもありますが、ここでは更に詳しく記載します。不具合に関する情報は充実している方がいいのですが、効率よく情報を集める為にある程度項目を決めておくと良いでしょう。
下記の項目は不具合の情報を集める際に私が意識している内容になります。色々ありますが慣れてくると自然と確認する必要のある項目が浮かんでくると思います。又、不具合の内容によっては原因追及や対策案の材料が集まったなと思ったら途中で情報収集を止める場合もあります。
< お客様に確認する事 >

下記の項目はお客様に協力頂く部分になります。不具合を出してお客様に迷惑を掛けているので中々聞きにくい場合もあるかもしれませんが、大切な事ですので出来るだけお客様からも情報を得ましょう。
①不具合の現物を確認しよう。
これは不具合の状況を正確に把握する為に必要な事です。不具合発見の連絡がお客様からあった時に不具合内容を聞くと思いますが、実際に現物を見るとお客様が言っていた内容と違う場合もあります。又、現物を見て新たに気が付く事もあるかもしれません。不具合のあった現物が遠くにあって確認出来ない場合は、不具合のあった箇所の他、製品全体の写真を送って貰うなど、出来る限り”現物を自分の目で見る”努力をしましょう。後、現物を確認するのは早い方がいいです。時間が経ってしまってからでは、誰かが触ったり、移動させたりした際に不具合の状態が変化してしまうかもしれません。
②不具合の発見された現場を見よう。
これは不具合の原因が環境による可能性がある為です。不具合が発生した製品がどういった状態で保管されていたかも重要です。例えば、製品に取り付けているアクリルパネルが変形していた原因が、室温が高くなる倉庫に長時間保管していた為だったり、製品が変色していた原因が雨漏りによる錆水の付着だったりする事があります。
③不具合が発見された状況やきっかけを確認しよう。
不具合が発生した状況やきっかけについては原因や対策を考える際のヒントになる場合があります。意図しない特定の使い方をしないと発見・再現できない不具合は特にこの状況やきっかけが重要になります。例えば、特定の手順で操作した場合だけに発生する不具合や、お客様が製造メーカーで不具合のあった製品を固定する際にいつも通りの取り付けが出来ないから発見出来た不具合など。前者は特定の手順でしか不具合が出ないのであれば、もしかすると不具合の原因はプログラムに欠陥があるのではないかと推測が出来ますし、後者は製品を固定する際に不具合を見つける事ができるのなら、自社の検査でも同じ方法で不具合を検知しようといった対策を立てるヒントにもなります。
< 自社で確認する事 >

下記の項目は自社内で用意、確認できる情報の項目になります。出来るだけ全ての項目において情報を得られる様、検査履歴や製造番号を割り振って必要な情報を残すなど日ごろの業務が重要になります。
①号機番号や製造番号、シリアルナンバーを確認しよう。
号機番号や製造番号、シリアルナンバーとは、品番や型式が同じでも、一品一葉に割り振られている番号の事です。不具合が出た製品の号機番号や製造番号、シリアルナンバーを調べる事は原因を探る入口となります。固有の番号は製品に割り振るだけでは意味が無く、この固有の番号と製品の組立が行われた状況に関する様々な情報を紐づけて管理されている必要があります。例えば、製品固有の番号をパソコンに打ち込めば、その製品を作った時期、地域、工場、作業者、ロットなどが分かる事を言います。
②不具合のあった製品を組み立てた際のエビデンスを確認しよう。
エビデンスとは、「証拠」、「根拠」、「裏付け」と言った意味になります。不具合のあった製品を組み立てた際に使用したチェックリストなどの検査履歴や、何かイレギュラーがあった時の対応履歴などをエビデンスと言っています。こういったエビデンスから、不具合の原因や対策を探るヒントが出てくる場合があります。もし、エビデンスを残せていない、しっかり管理出来ていない場合は、エビデンスを残す仕組みを作る必要があります。
③いつ組み立てた物か確認しよう。
製品がいつ頃組み立てた物かによって原因が変わる場合があります。例えば、不具合のあった製品の組立時期は設備を入れ替えた時だった、災害によって浸水があった時だった、作業者が入れ替わった時だった、効率UPの為に作業方法を変えた時だった等…。何か変化点があった時は思いがけない不具合が出るものです。その為、こういった変化点が無かったかどうかも不具合の原因を探る際の重要なポイントになります。
④どれだけの単位で組み立てをしたか確認しよう。
これは波及範囲の特定にもなりますが、製品をロット単位で組み立てや製造をしていた場合は、発見された不具合と同じ事象が他の製品にもあるかもしれません。そして、不具合がロット全てに発生していたのか、まばらに発生していたのか、発見された一個だけだったのかにもよって原因と対策が変化します。
⑤不具合個所の検査項目が有ったか確認しよう。
不具合が発生した原因を考える際、作業者はその部分を意識出来ていたかどうかもポイントとなります。チェックリストに確認項目があって、作業者は注意して確認したはずなのに見落としたのか?チェックリストに確認項目が無くまったく気にしていなかったのか?不具合が発生した事には変わりないですが、この二つの違いによって、原因と対策内容も変化する事になります。
⑥組立を示す手順書や図面があるのか確認しよう。
作業者が製品の製造にかかわる際、最初は誰かに教わったり、手順書や図面を見ると思います。そして、作業者がミスをした場合そもそも作業者が教えられた事が間違っていたとか、見ていた資料が古い物だった、誤解を生む表現になっていた、図面が間違っていたなどもありえます。そういった事が原因で不具合が発生する場合もあります。”手順書や図面は他の人も見て組立出来ているから正しい”、”あの人が教えたのだから間違いない”といった思い込みは不具合の原因を探る上で弊害となります。出来るだけ客観的に物事を見ていきましょう。
⑦どんな組立方法か確認しよう。
不具合の原因を考える際、品質担当者は実際に不具合のあった製品の組立をした方がいいです。手順書や図面から分からなかった作業のし難さ、ややこしさが分かったり、この部材は壊れやすいんだなとか、これは忘れ易いなと言ったことが分かるかもしれません。作業はやった事ないけど、作業内容は簡単だからしなくてもいいと考える方もいるかもしれませんが、”自分で実際に作業をしてみる”事は大切だと知って下さい。
⑧誰が組み立てた物か確認しよう。
製品の組立に関わった作業者が誰だったかを調べましょう。これは作業者を責める為ではなく、作業者に対しヒアリングしたり作業者が関わった製品を特定し波及範囲を調べる為に必要になります。又、作業者が習熟者だったのか、応援による作業者だったのかによっても不具合の原因と対策が変化します。
⑨作業者にヒアリングをしよう。
作業者が特定できれば、作業者に対し不具合のあった製品を組み立てた際、当時いつもと違う事があったのか?作業を間違って覚えていないか?など、不具合が発生した当時の状況や作業者の認識を確認しましょう。もし作業を間違って覚えていた場合、その人が関わった製品すべてが同じ不具合がある可能性があり、波及範囲を特定する情報になります。又、不具合を作業者に見せた時、これは”不具合である”と認識するのかどうか?もポイントになります。認識した場合、不具合を出してしまうイレギュラーがあったのかどうか?認識しない場合、教え方が間違っていたのか?どこかで勘違いしてしまったのか?など、ヒアリングによって不具合の原因や対策のヒントが出てくる場合があります。
⑩組立方法は皆同じ方法で組み立て出来ているか確認しよう。
同じ作業をしていても、作業者によっては色々な方法で作業を進めてしまいがちです。”この方が早い”、”この方が楽だ”といった理由で、決められた手順を守っていない場合もあります。そういった作業をしていると、思いがけない不具合が出る事があります。手順が決められていなければ手順を標準化し決める事が先決ですし、決められた手順があれば、その通りに作業が出来ていたかがポイントになります。上記⑨で作業者にヒアリングする以外に、回りの作業者がどんな作業方法なのか?普段本当に手順を守って作業しているのか確認する事も大切です。
最後に(読まなくてもOK)
私はインフラ関係の機器を造っている会社の品質担当をしており、これまでに不具合報告書を幾つも書いてきました(自慢できる事では無いですが…)。今でこそ慣れましたが、最初の頃は不具合報告書を書く事が凄く嫌でした。特に原因と対策って何書けばいいのだろう?何が正解なんだろう?と滅茶苦茶悩みながら書いていました。当記事では、そういった悩みや疑問について少しでも解決出来ればいいなと思い、これまでの私の経験や考え方をまとめています。
この記事を読んでくれている人の状況は様々だと思いますが、どんな仕事でも不具合は発生するでしょうし、前進する為には原因と対策を考え日々改善する必要があります。当記事にある原因と対策を考える上で必要な”情報集め”部分だけになりますが、どんな仕事でも基礎的な部分で一緒だと思いますので、良さそうな部分があれば是非取り入れてみて下さい。