不具合報告書を書いてみよう。注意ポイントやコツの紹介です。

不具合報告書の書き方
pesakku
品質管理の仕事をしていると、納品した商品に不具合があり、クレームを受けることがあります。重大な不具合だと原因と対策をまとめた報告書の提出を求められる場合もあるのですが、ここではそんな時に作成する「不具合報告書」の基本的な書き方や注意ポイント、原因と対策のまとめ方のポイントなどを紹介したいと思います。

不具合の連絡を受けたら三現主義で行動しましょう。

 まず、三現主義とは「現場、現物、現実」の三つの「現」を重視する考え方で、特に生産現場では広く認識されている言葉です。お客様から不具合連絡を受けたら、この三現主義の考え方に沿って直ちに不具合が発生した現場に向かい、現物を見て、触って、現実を知る事が大事です。状況によっては不具合が起こった現場に行く事が出来なかったりしますが、出来るだけ不具合に関する情報を集めましょう。又、お客様はすぐにでも不具合を直してほしい、代品が欲しいと考える事が多い為、一先ず応急的な対応を迅速に行う事を心がけましょう。又、後日「不具合報告書」を提出するよう要求があった場合は、いつまでに提出する必要があるかも確認しておきましょう。

お客さん
不具合が起こったら仕事が止まってしまうから、まずは直してほしいし、他にも同じ不具合があるんじゃないかな?もしかしたらもう販売や出荷をしてしまっているかも?と色々不安が出てきます。だから、少しでも早い対応を心がけて欲しいですね。
pesakku
不具合連絡を受けたら、まずはお客様が何を最優先にするのか確認することも大事です。上記の三現主義の基本的な考え方を基礎とし、お客様に対しどう行動したら満足してもらえるのか?をその都度考え行動する必要があります。お客様(私からしたらお客様のお客様)に報告する必要があるから、「不具合報告書」を3日以内に提出して!と言われる事もありましたし、時間が掛かってもいいからじっくり調査してほしいと言われた事もありました。

「不具合報告書」の基本フォーマットを決めましょう。

 不具合報告書を実際に書かないといけなくなった時に、まずは会社で使用している基本フォーマットがないか確認してみましょう。ほとんどの会社は専用のフォーマットを決めていると思いますが、もし無い場合は下記フォーマットを参考にしてください。又、大手企業に多いのですが不具合報告の内容をデータベースで管理する為、客先で決めているフォーマットでないと受け付けてくれない場合があるので確認をとりましょう。
 大事なことは、不具合報告書を提出するお客様が何を求めているのか?必要な情報が洩れなく載っており、読み手にとって分かりやすく記述されている事ですので、あまりフォーマットにこだわる必要はないと思います。

「不具合報告書フォーマット」

不具合報告書フォーマット

  1. 採番
  2. 作成日
  3. 宛先
  4. 差出人
  5. 標題、主題
  6. 本文
  7. 記書き
  8. 不具合情報
  9. 発生原因
  10. 流出原因
  11. 発生対策
  12. 流出対策
  13. 波及範囲と対応方法
  14. 添付資料

採番

 フォーマットの「1、採番」部分ですが、会社内部で資料を保管する場合に報告書毎に一意に振り分ける番号になります。これはお客さんからすると無くても困るものではありませんが、しっかり保管するためにも重要な書類には採番をしましょう。どんな番号を振り分けるかは会社のルールがあると思いますので、確認してみてください。

作成日

 フォーマットの「2、作成日」の部分ですが、これは単純に不具合報告書が完成した日で良いと思います。私は、お客さんに提出する当日か前日の日付を記入するようにしています。これは提出する日と作成日に大きなズレがあると、お客さんによっては報告書をもっと早く出せたんじゃないか?提出日ギリギリまで調査してないのではないか?と思われる場合がある為です。

宛先

 フォーマットの「3、宛先」の部分ですが、ここには不具合報告書を提出するお客さんの会社名を略さずに記載し、その下段に部署名を記載しましょう(単純に会社名だけを記載する場合もあります)、注意点としてはお客さん個人の名前を書かないようにしましょう。報告書はお客さんの会社や部署に対して出すと考えてください。

差出人

 フォーマットの「4、差出人」の部分ですが、ここには自社の会社名を略さずに記載し、その下段に所属部署と名前を記載しましょう。不具合報告書を作成した際、内容を精査し認可する上司がいる場合は、会社名の下段に上司の所属部署と名前、その下段に作成者の所属部署と名前を記載しましょう。差出人の名前を記載するのは、どこの会社の誰が責任を持っているか分かるように名前を記載しています。

標題、主題

 フォーマットの「5、標題、主題」の部分ですが、ここではどのような不具合に対しての報告書か分かるような文を記載します。あまり長くても駄目ですし、短くても分かりにくくなります。私は大体25文字から40文字程度におさめていますが、ポイントとしては標題だけでどんな不具合なのか、大体の概要がイメージできれば良いと思います。

本文

 フォーマットの「6、本文」の部分ですが、ここには不具合発生についてのお詫びの文言が入ります。例として下記のような文章となります。

【 「本文」部分の例文 】
平素は弊社に格別のご高配・ご厚誼を賜り、心より感謝申し上げます。 この度は (この部分に不具合の概要を記載) を発生させ、誠に申し訳ありませんでした。下記にて不具合の原因調査結果及び今後の対策を纏めましたのでご報告させて頂きます。ご査収のほど宜しくお願い申し上げます。

 上記例文の「(この部分に不具合の概要を記載)」以外は定型文でOKです。不具合に対してのお詫び文句は3行程度に簡潔にまとめ、こだわる必要はありません。お客さんにとって重要なのはこの部分ではないからです

記書き

 フォーマットの「7、記書き」の部分ですが、「記」の文字を行の中央に記載し、上下には一行分の行間を空けます。意味としては、ここから必要な情報を記載しますという事です。又、「記」と「以上」はセットになりますので、不具合報告書フォーマットの下部にあるように、右下に「以上」と記載して締めくくるようにしましょう

不具合情報

 フォーマットの「8、不具合情報」の部分ですが、不具合報告書フォーマットでは、「(1)発生日」、「(2)発生場所」、「(3)発生機器」、「(4)概要」の項目になっています。いつ、どこで、何が、どのような状態だったのか分かるように記載すれば良いと思います。特に「④概要」部分では、誰が見てもどんな不具合内容だったのか分かるように記載する事が大事です。文字だけでは伝わりにくい場合は図を用いても良いかと思います。又、品番や品名などがある場合は正しく記載しましょう。

不具合の「発生原因」と「流出原因」の記入ポイント

 ここまで説明した部分は、報告書を作成する際、ありのままの事象を書いたらいいだけだったのでスムーズに書き進める事が出来る部分でした。しかし、報告書の内容で最も重要なのがここからです。なぜその不具合が発生したのか?その原因(発生原因)を特定し、なぜ発生した不具合がなぜ社外に出たのか?その原因(流出原因)を特定する必要があります。ここでは記入の際のポイントをお伝えしたいと思います。

発生原因の記入

 「発生原因」とは、最初に不具合が発生した原因の事です。まずは不具合が発生した原因を特定しなければならないのですが、その為にまずは下記を確認する必要があります。

最初に確認する事
  1. 不具合が起こった現場に行きましょう。
     お客様がどうやって使用していたのか?どこに置いて使用していたのか?もしかしたら適切な扱い方や置き場所ではなかった事も原因となっている場合があります。又、想定していない使用方法だったりする場合もありますので、現場の確認は重要です。
     
  2. 不具合が起こった現物を確認しましょう。
     ここは特に重要です。不具合の連絡はお客さんから口頭で説明を受ける場合が多いのですが、どんな不具合なのか正確に把握する為に自分の目で確認をしなければなりません。もし、お客さんが直してしまったり、遠くて現場に行けない場合は、不具合箇所の写真を貰ったり、出来る限り詳しく説明をお願いしましょう。
     
  3. 作業者を特定しましょう。
     不具合が発生した商品を誰が作っていたのか?作業者の特定は大事です。作業者にヒアリングする事で発生原因を特定できる事もあります。又、作業者が勘違いして作業を覚えていた場合、その他の商品も同様に不具合が発生している可能性があります。もし、作業者が特定できる履歴が無ければ履歴を残せる仕組みを考えましょう。
     
  4. 作業者が実際にどんな方法で作業していたか確認しましょう。
     決められた方法で作業が出来ていたかどうか確認する必要があります。きちんと決められた方法で作業が出来ていた場合は、そもそも作業方法に問題があったのではないか?決められた作業が出来ていなかった場合は、なぜ決められた作業が出来ていないかったのか?を考える必要があります。
     
  5. イレギュラー作業が無かったか確認しましょう。
     不具合が起こった商品は、棚から落としてしまって組立直した物だった。社内で不具合が見つかって見直しを実施していた。などなど、色々な理由がありますが、通常の作業ではなかった事をイレギュラー作業と言い、作業自体は何も問題なかったが、その後のイレギュラー作業が不具合の原因だったという事もありますので、この点もきちんと確認しておきましょう。

    ※不具合の原因と対策を考える前の情報集めについて、さらに詳しい内容を下記の記事に纏めましたので、併せて確認下さい。
    「不具合の原因と対策を考えよう!~まずは情報集めから~」記事へ
     
     

 上記の点を確認したのちに、不具合の発生原因を特定し、報告書に纏めていきます。不具合の原因は上記の確認した部分のどこかにあると思います。報告書に纏める際のポイントは下記になります。

発生原因を記載する際のポイント
  1. 発生原因は出来れば一つに絞りましょう。
     不具合がなぜ起こってしまったのか?もしかしたら幾つかの理由が重なって発生したのかもしれません。しかし、その全てを報告書に記載した場合、それら全てに対し対策を実施しなければなりませんし、読み手にとって分かり辛い報告書になりがちです。その為、可能な限り不具合が起こった原因は一つに絞りましょう。「その一つを防げたなら不具合が起こらなかった」と考えられる場合は、その一つで良いですし、それだけでは説得力が無いと感じる場合は原因を増やす事になります。
     
  2. 誰が見ても分かるように図を交え、簡潔に記載しましょう。
     不具合の原因を絞ったら、次にその内容を報告書に記載するのですが、その内容は誰が見ても分かるように記載する必要があります。社内だけで使用しているような略語などは避け、出来るだけ図も交え記載しましょう。又、読み手にとって分かり易いよう、詳しく記載しようとするのはいいのですがあまり必要のない情報を載せると文が長くなりかえって読みにくくなるので注意しましょう。
     

流出原因の記入

 発生原因が特定出来たら、次になぜその不具合が社外に流出したのか?を特定し報告書に纏める必要があります。事前の確認点や纏める際のポイントは「発生原因」に記載した内容と同じです。大体の工場は「①組立→②検査→③出荷」の順で商品を作っていると思います。①組立では発生原因が関係し、②検査と③出荷では流出原因が関係してきます。①組立と、②検査と、③出荷の工程はそれぞれ異なる作業者で異なる作業場の場合もあれば、全て同じ作業者で同じ場所の場合もあると思いますが、「不具合が発生した原因」と「不具合が流出した原因」は分けて考えましょう。

不具合の「発生対策」と「流出対策」の記入ポイント

 「発生原因」と「流出原因」が特定出来たら、次は「発生原因」に対してどんな対策を立てたのか?の「発生対策」と、「流出原因」に対してどんな対策を立てたのか?の「流出対策」を記載する必要があります。

発生対策の記入

 「発生原因」に対する対策「発生対策」では、不具合の発生原因に対して具体的にどのような対策を実施し、再発を防いでいくのかを具体的に記載します。その際のポイントが下記になります。

対策を記載する際のポイント
  1. 根本的な解決となる対策を考えましょう。
     不具合の原因に対して、「作業者に指導しました」や、「注意喚起の為、掲示物を作成しました」などでは、お客さんは本当にこの対策で大丈夫だろうか?と感じ、納得してもらえない事があります。不具合の重大度にもよりますが、人による識別の判断ミスだったら、機械による判断に切り替えたり、類似部材の付け間違いだったら、部材を一つに統一するなど、根本的に間違いが起こらない対策を考えましょう。・・・とは言っても中々難しい場合はチェックリストを作成し、作業者による確認を漏らさず実施出来るようにしていきましょう。
     
  2. 対策が恒久的に維持できる仕組みを考えましょう。
     一度決めた対策は何年経っても維持出来るようにする必要があります。対策がその場限りの物にならないように、どうしたら維持できるか?を考える必要があります。その為、お客さんに提示する対策も効果を期待してもらえる事はもちろん、その対策を確実に維持できるかどうか?も考え対策を決定する必要があります。
     
  3. 実際の成果物も一緒に提出しましょう。
     対策を決定し報告書に記載した際、本当にその対策を実施しているのか?実際に何がどう変わったのかお客さんは気にします。その為、資料を作成したなら、その資料を添付したり、何か機械を取り入れたり現場のレイアウトを変更したなら、その写真を交えながら改善前と改善後の違いを説明しても良いでしょう。
     
pesakku
たまに発生対策が発生原因に直結していないと指摘を受ける事があります。例えば、「部材を取り付ける方向が間違っていた」不具合が発生し、発生原因は「図面の表記が誤解を与える物だった」とした場合、発生対策は「図面の改定と補足資料の作成」で良いと思うのですが、この時「指差し呼称のルール追加」や「現場内での二重チェック実施」とした場合、良く確認することで間違いは少なくなるかもしれませんが、図面の表記自体は改善されていない為、発生原因に直結した対策となっていません。

流出対策の記入

 「流出原因」に対する対策「流出対策」では、不具合の流出原因に対して具体的にどのような対策を実施し、流出を防いでいくのかを具体的に記載します。又、もう一度おさらいですが、大体の工場は「①組立→②検査→③出荷」の順で商品を作っており、①組立では発生原因が関係し、②検査と③出荷では流出原因が関係してきます。ここでは②検査と、③出荷の工程で実施する対策のポイントになります。ポイントは「発生対策」と同じですが、ここでは下記のポイントも追加になります。

対策を記載する際のポイント
  1. 発生対策が確実に実施されたか確認を行いましょう。
     もし、発生対策が確実に実施されていたなら、不具合は絶対に無いと判断される場合、発生対策が確実に実施されたかどうか?を②検査か③出荷の工程で確認する対策を取りましょう。発生対策の実施の履歴が機械に残っている場合は履歴のチェックを実施すれば良いと思います。もし、発生対策がチェックリストによる確認だったら組立作業者は確認もせずにチェックリストにチェックを入れている場合もあるので、定期的に作業方法を抜き打ちでチェックしたり、一定期間は検査の際も同じ個所を確認する対策が必要でしょう。
     
  2. 発生対策と異なった対策を実施しましょう。
     どんな対策であれ、なにかしら人が判断する手順があれば不具合の確率は0にはなりません。不具合内容が重大で手間が掛っても二度と出してはならない場合で、どうしても根本的な解決が難しく人の判断に頼る対策しかない場合、②検査や③出荷の工程でも確認作業を実施し、2重、3重のチェックが必要になります。その場合、発生対策と違った方法で確認する事が重要です。なぜなら、万が一発生対策で見逃しが発生した場合、同じ理由で見逃しを発生させる可能性があるからです。
     

その他の記入事項について

波及範囲と対応方法

 フォーマットの「13、波及範囲と対応方法」の部分ですが報告書には波及範囲を記載する場合もあります。波及範囲とは、見つかった不具合と同じ事象が他の商品にも発生している範囲の事です。「発生原因」の内容によっては、この波及範囲がとても大きくなってしまいます。波及範囲の特定には、まずは商品の組立に使用した機械や関わった作業者を特定する必要があります。その為、毎日の作業履歴を正しく残す事がとても重要になります。又、波及範囲を記載した場合、どう対策するのか?についても記載しましょう。場合によってはお客さんの協力が必要になる事もあるので、自社だけで解決が難しいと判断した際、早急にお客さんに指示を仰ぐ必要が出てきます。

添付資料

 「発生対策」の記入箇所でも触れましたが、報告書に何か添付する補足資料があれば、報告書の下部に ” 【添付資料】 「〇〇〇〇(ここに名前).pdf」 ” のように、どんな添付資料があるのか分かるように記載しましょう。

所見、感想について

 不具合報告書の締めくくりとして報告者による所見や感想を記載する場合がありますが、個人的にここは必要ないと思います。やはり、最も重要なのは「発生原因と対策」、「流出原因と対策」なので、この部分に注力しましょう。

不具合報告書の記載例

 不具合報告書の記載例の記事が下記になりますので確認して下さい。
(この部分は今後記事を増やしていく予定です。)

不具合報告書の記載例①…ダメな報告書について記事にしています。

品質担当者のホンネ

 ここまでで、不具合報告書の書き方やポイントをざっくりとですが記載できたと思いますが、どんな場合でも「原因と対策」が最重要になります。今後は発生原因の特定の為の手法や具体的な対策の取り方を紹介したいと思います。
 私はこれまで幾つもの不具合報告書を書いてきましたが、不具合の内容によっては現物が確認出来なかったり、何か月も前に作った商品で作業者も退職していたりと、発生原因を特定できない事があります。そんな場合でも報告書を作成しなければならない時は困ります。そういった場合は、想像や推測で報告書を作るしかないですし、一度対策したはずの不具合が再発し再度不具合報告書を作り・・・対応に追われ・・・と品質担当者は大変だなぁと感じることも多いですが、スキルと経験を積めばどんな問題が発生しても上手く?対処できると思いますので、めげずに頑張っていきましょう。